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音声ガイド付きで特攻隊員×JKのタイムスリップ恋愛映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を見た感想

Twitter(X)炎上で知りましたが、いざ見たら泣いてしまいました……映画館で年甲斐もなく……。クリスマスイブにぼっちで『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』に行ったオタクの簡易レポです。ネタバレ有。


あらすじと見所

女子高生が終戦間近の日本にタイムスリップしてしまい、特攻隊員のイケメンと恋に落ちるお話。もともと女子中高生に人気の小説が原作らしく、恋愛がメインなので歴史モチーフはかなり雰囲気です。

詳しい方は「そうはならんやろ」*1と突っ込みながら楽しめばいいし、若い子は特攻の負の歴史についても目を向けるきっかけになればいいんじゃないかと!

私はどこか懐かしい男女ものの王道展開にニコニコしつつ、物語の終盤、石丸さん(特攻隊員仲間の明るい元気キャラ)と千代ちゃん(魚屋の娘で主人公の友達)が出撃前日にお別れするシーンで一気に惹きつけられました。

千代ちゃんが作ったお人形を石丸さんに渡す、というあくまで明るいやり取りなんですけど、こう表立って言わないだけで石丸さんも千代ちゃんのことを大事に思ってるし、恋愛なんてものもしてみたかっただろうし、本当は行きたくなかったかもしれない……って感情が何重にもうかがえて役者さんって凄い

これは一例なんですけど、ストレートに抱き合って好きだと泣くよりもよっぽどお互いの思いの強さが響きました。その後出撃シーンで石丸さんがお人形を胸元にしっかり携えているのもまた泣かせるんですよ~~~。千代ちゃんも石丸さんに褒めてもらったお洋服のこと一生大事にするんだろうなぁ。しみじみ。調べたら伊藤健太郎さんと出口夏希さんという役者さんだそうで、声優オタク的には別の人の方を連想してしまいますが、お名前を知れただけでも良かったです!

 

百合ちゃん(福原遥さん)と彰さん(水上恒司さん)について

主人公の百合ちゃんは、いきなり現代から1945年にタイムスリップして大変なのは勿論なんですけど…。何もしなくても全部お膳立てされて、チヤホヤされて状況が整うところは少しご都合主義かなって思っちゃいました。でもビジュアルが福原遥さんだから!!!私が娘と孫を亡くしたツルさんでも何でもお世話したくなっちゃうし、私が彰さんでも撫で撫でしたくなることでしょう。そういうもんです。

百合ちゃんって他の子助けて亡くなったお父さんのトラウマもあり、自分を犠牲にして働くお母さんへの反抗期もあり、ツン系のキャラかな?と思いきや割と典型的な恋愛小説の主人公タイプでした~~。
妹じゃ嫌だっていう健気なやり取りとか、彰さんにかき氷食べさせてもらって「幸せの味」と喜ぶのとか、かなりコテコテなんですけど、まいんちゃんほど可愛ければそりゃ男も落ちますねってことでひとつ。

彰さんは、終始顔がよかった…。ちゃんと昭和時代の男前な兵隊さんって風格が出てて、衣装似合うし、表情もミステリアスだし、年齢以上に達観して見えました。ただ喋るとちょっと演技がロボ寄りかもしれない。アニメじゃなくて実写映画だからこのくらい抑えた口調の方が向いてるのかも?

原作の構造上恋に落ちるのが結構早くて、唐突に乙女ゲームの口説くセリフを吐き出すbotみたくなってたけど、都合の良いヒーロー兼ヒロインが今まで得られなかった父性を与える存在だと思えば……。最後まで綺麗ないい人だったしそれが彼の矜持だと受け取りました。もっと人間くさい脆さも見てみたかったけど。

ラブは想像以上にプラトニックでした。恋愛映画なのにキスの一つもせず、告白という告白すら主人公が後になって読む手紙だけなんて!その分観客側が感情を乗せやすくて、生まれ変わりif二次創作の妄想がはかどるから人気なのかもしれません。思いは通じたけれども時代に翻弄されたせいで綺麗なまま保存される初恋感。

 

脇キャラについて

・当時の価値観を比較的反映してるであろう警官(小物臭ヒール枠)とか加藤さん(特攻隊員仲間)が、怒鳴ってくるうるさくて怖い人って観客に思われてたらやだなっていうのは一つ。
百合ちゃんは現代の子なので、愛する人がいるのに国のために死ぬなんて意味わからない、日本はどうせ負けるのに無駄だよって立場です。その感情論もわかる、わかるけど、あなたに正義があるようにこっちにもこっちの正義があるから……論破とか言い負かすとかじゃなくて平行線で終わるだけなんですよねぇ難しい。一応彰さんから時代のせいだってフォローが入りますけれども。

・途中で脱走する特攻隊員のマンネ板倉くん。仲間が見逃したら故郷に逃げられるって軍の制度的にかなり欠陥がある気がしますが……それはさておき。戦争自体の無意味さを問うて、特攻より婚約者の女性を優先するって当時じゃ絶対に赦されない行為だと思うけど、それを口に出すことへの抵抗の少なさや個人主義っぽさ*2が今時の役者さんに合ってました。

板倉くんは嶋﨑斗亜さんというLil かんさいのお方です。昔少年倶楽部を見ていたのでキラキラアイドル姿は拝見してるはずなんですが、言われなきゃわからないくらい俳優さんのお芝居が馴染んでました!アイドルなのに髪型も坊主にして挑まれていて、むかし自担がドラマのために長い髪を剃って挑んだのを思い出してほっこりするなどしました。かわいかったです。

 

音声ガイドについて

当ブログ的にはここがメイン。高梨謙吾さんがバリアフリー音声ガイドを担当されると聞いて、わざわざ聴きに行きました。推しのおかげで見る映画の幅が広がって有難い。


まずバリアフリー上映が何かを説明すると、私が見に行った場所は日本語字幕付きで、耳が不自由な方への文字解説がデフォルトで画面に流れていました。
そして音声ガイドの方は、専用の「HELLO! MOVIE」というアプリをダウンロードして、聴きたい人がイヤホンをつけて聞く仕様。シアターの中に入ってアプリを立ち上げると、音に連動して自動でガイド音声が流れます。上映前の説明からもう声が良くてこっちは重症気味でした…。

登場人物の動きや画面になにが映っているかの解説が逐一入るんですが、その時に「加藤は何何した〜」とか「板倉が〜」って名前まで読み上げてくれるので、私みたいなキャラの見分けつかなくなる人にオススメ。これ誰だっけ?って悩む瞬間が減って、とても快適な音声ガイド体験でした。あまりに律儀で丁寧だから、ちょぎくんが主のためにした仕事かなとか想像するとたのしい。

基本は淡々とした無機質なナレーションなんですが、その時の雰囲気に合わせたニュアンス表現が神!!!!登場人物が初めて知ったことの説明だと声色も訝しげになってたり、盛り上がる箇所は自然に明るくなったり。
私が一番好きなのは、夜の百合畑での逢瀬です。まず絵のひきが強くて、百合ちゃんと彰さんの恋路的にも大事なシーンなんですが、声音の方も一気に叙情的に!何が変わったか上手く言語化できないけど違うんですよ!一際優しい声で、ひんやりした中に奥行も深みも感じられて、この機微は人の声で読み上げるからこそだと感動しました。台詞がなくても恋って表現できるんだ。

あと驚いたのが、登場人物のセリフとは被らないように速さも遅さもタイミングよくガイドしてくれること。情報がごちゃっと渋滞せず、説明の文章を考える人も読み上げる高梨さんも職人芸でした。

 

客層について

若い女の子がとにかく多かった!役者さんのファンなのかな?とも思ったけど、前の席の子達は小説の結末について話をされていたので、原作ファンの方も一定数いらっしゃるのかもしれません。TikTokで人気らしいし。

クリスマスイブで一人で行っても周りカップルだらけってことはなく(大人プラネタリウムの時は酷かった)、しっかりした態度で見なきゃダメってほど厳かな場でもなかったです。泣いてる人は私含めちょこちょこいました。

余程混んでいる映画ならバリアフリー上映に入るのは遠慮した方がいいと存じますが、私が行った回は7割くらいの埋まり方だったので、字幕解説つきで見たいよ!という方もお気軽にぜひ~。

※追記 アプリ対応作品であれば、音声ガイド自体はどの上映でも利用できるそうアプリ入れてイヤホン持っていって機内モードにすればOK!

バリアフリー上映はあくまで日本語字幕に対応なので、音声の方は関係なかったみたいです。

 

 


おまけ:特攻賛美かどうか

別にそうでもなくない?フワッとして終わったような?というのが正直な感想。
この話だと戦争は悲恋を盛り上げるスパイスなので…決して時代考証が正確な教育映画ではないと知った上で見ていただいて…。

百合ちゃんパッパは他の子を助けて死んじゃって、一人で働くマッマは自分の服も買えないほど苦労しながら娘を大学に行かせたいと頑張る。自分の妻子を不幸にして意味があるの?と、百合ちゃんはもともと英雄願望に批判的な立場の子です。

昭和にタイムスリップしてからも特攻なんて無駄だと反対し続けて、そのせいで周りの人を怒らせたり気を遣わせたり色々もめ事を起こすんですけど…。彰の出撃を見届け、現代で自分に宛てられた手紙を読んで前向きに変わります。ここが多分叩かれちゃってるのかな…?

愛する人や家族といった近しい存在を守るのみならず、もっと大きい存在のために散っていた特攻隊員たち(彰さん、石丸さん、寺岡さん、加藤さん)。
特攻から逃げて、婚約者と添い遂げて天寿をまっとうした最年少の板倉くん。

対比になってるけど、決してどちらも否定せずに爽やかに描いて終わった作品だと思っています。

この話は基本悪い人が出てこないので誰かを断罪することもなく、本人の誇りというか人生の価値を奪ったらだめだよねっていう…極めて個人的な話に着地させてた印象です。戦争や特攻自体を認めてはいないけど、彰さんが百合ちゃんを思う気持ちは本物だよ♥的な。百合ちゃんの方も汲み取って彰さんの将来の夢を継ぐ訳ですし。

あと兵隊さん、特に特攻隊員を「生神様」だと呼ぶ扱いは『イキガミとドナー』の中島さんや八代さん、山下さんを思い出してグッときたりもしました。周りは崇めて敬うけどまぁ…エゴですよね結局。兵隊さんたちの救いになってたツルさんもエゴ。国のため家のため愛のために散るのもエゴ。そこに正しいかの価値観を付与するのはナンセンス、ロマンスの雰囲気を吸え!!!!って潔いエンタメ恋愛映画です。ベタにはベタの良さがある。


ゲ謎にはオタク心が湧いたし、今回のあの花*3も泣いたし、次はゴジラを見に行こうと思います~!

 

*1:軍隊ってそんな簡単に抜け出せるの…その燃え方でよく無事だったね…等色々

*2:良い悪いは時代によって変わるので今の価値観っていうだけ

*3:←アニオタ的には『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』と紛らわしい